アルバータ大学では秋学期も後半戦が始まり、いよいよ大詰めを迎えようとしています。そんな中、次のような質問を相次いで受けています;アルバータ大学で古生物学を学ぶにはどうすればいいですか?思い返せば2年ほど前、私も受験で色々と苦戦した覚えがあります。そこで今回はそのような混乱をなくすべく、アルバータ大学で古生物学を学ぶ方法を徹底的に解説したいと思います。

  

201911月現在の情報ですので実際に出願する前には必ず大学ホームページをご確認ください。

IMG_1125
アルバータ州の名前を受けたアルバートサウルス 


1.     なぜアルバータ大学で古生物学を学ぶのか

 

この記事を読まれている方の中には、アルバータ大学と古生物学がどうつながっているのか分からないという人もいるかもしれません。そもそも古生物学とはなんぞやと思っている方もいるかもしれません。ここで改めて古生物学について簡単に説明しますと、昔生きていた生物について学ぶ学問です。よく考古学と混同されがちですが、考古学は主に人類の進化や文化の変遷について学ぶもので、古生物学はもっと広く生物全体について学ぶ学問です。つまり恐竜やアンモナイト、三葉虫など博物館で化石として展示されている生物について主に調べているのです。

ではなぜアルバータ大学で古生物学を学ぶのか。最近日本では急速に恐竜の化石が見つかっており、古生物学が盛り上がっていますね。しかし北米大陸では何十年も前からそのような状態が続いており、豊富な化石資料が集まっているのです。もちろんアルバータ大学も例外ではありません。豊富な資料があればそれを求めて世界中の研究者が集まってきます。そのためアルバータ大学には一流の化石資料と一流の研究者たちが集まっており、非常に整った環境の中で古生物学を学ぶことができるのです。

アルバータ州の特異な地形条件も古生物学を学ぶのに適している理由の一つです。州の西側にそびえるロッキー山脈では古生代の地層が、それより東側に広がる広大なプレーリーには中生代の地層が、そして州内のいたるところに新生代の氷河堆積物がみられます。(このことについて詳しくは私の以前の記事を参考にしてください)そのため恐竜のみならず、あらゆる時代の古生物について学ぶことができるのです。

IMG_1398
ドラムヘラーの近くにあるホースシュー渓谷で見られる地層は全て中生代のものだ 

 

2.     アルバータ大学の古生物学専攻

 

アルバータ大学で古生物学を学ぶべきもう一つの大きな理由。それは学部生時代から古生物学を専攻できるということです。大学院で古生物学を教える学校はたくさんありますが、学部生時代から専門的に学ぶことのできる学校はそう多くはありません。そのため周りよりも早くスタートを切ることができるという点からもアルバータ大学はとてもオススメです。

面白いことにアルバータ大学では扱う古生物によって学科が変わってきます。古脊椎動物(恐竜や魚類など)は生物学科、古無脊椎動物(昆虫や甲殻類など)は地球惑星学科が管轄しています。しかしながら専門を決めるのは3回生からになるので初めの間はあまり気にする必要はありません。むしろ12年の授業を受けている間に方向性が変わる可能性が大いにありますので、最初から決めずに広い視点を持ってきてください。

新入生にとって一番大事なのはどのように古生物学を専攻するかです。実はアルバータ大学では1年の時点から古生物学専攻が用意されていません。つまり一年間は別の科目を専攻して、2年で編入することになるのです(ちなみに私が現在2回生ですので今年になって初めて古生物学専攻と名乗れるようになりました)。編入するにいくつかの条件があります。良い成績を取ることはもちろん、学部から指定された教科を取る必要があります。この指定教科を取るためにはGeneral SciencesあるいはEcology, Evolution & Environmental Biologyに入ることをお勧めします。そして1年の10月から2月の間に編入の手続きを踏み、合格通知が来れば晴れて古生物学者への一歩を踏み出すことができます。

IMG_1075
大学内に古生物学の博物館があるのもまたアルバータ大学の魅力である。 

 

3.     古生物学を学ぶのに何を勉強するのか

 

いうまでもなく古生物学は非常に難しい学問です。なぜか。まず内容の特性上、地学と生物学は必須科目となります。これだけでも覚えるものが多くかなり大変なのですが、ここから新たな発見をしようと思うとさらに視野を広げなければなりません。例えば年代や古環境を調べるには化石やそれに付随する岩石の同位体を調べなければいけません。そのためには化学の知識が必要となってきます。また古生物の生態を調べるには体の構造や働きを理解しなければなりません。その場合物理学の知識も必要になります。物理学は古代の地球のシステム(水や気体の流れ)を理解するのにも重要になってきます。そして物理学には多くの場合たくさんの数式が付随するため、数学的な知識も持っておく必要があります。

大事なのは理系科目だけではありません。何か発見をすれば発表しなければなりませんが、そのための技術は英語の授業(ややこしいですがカナダでは日本でいうところの国語)で身につけます。また英語の授業を通して、見つけた様々な証拠をつなぎ合わせていく論理的思考方法も学ばなければなりません。

このように学ばなければいけないことが多いゆえ、途中で諦める人も少なくないのだとか…。そのため古生物学を目指すみなさんは中高の勉強で様々なことに触れておいてください。幸いなことに日本の中高の理数科目は非常に進んでいるので、日本での勉強についていければカナダの英語の授業にも問題なく対応できます(1年目は新たな知識を学ぶというより英語の専門用語に慣れる期間と思って大丈夫です)。

IMG_1269
古生物学者にはあらゆる分野での専門知識が求められる 

 

4.     大学生活で身近に古生物学に触れるには

 

先述の通り、無事アルバータ大学に入学できても古生物学を専攻できるのは2年から、専門的に研究ができるのは3年からになってしまいます。中にはもっと早くから古生物学に関わりたいのに…という方も多いのではないでしょうか?ここではそんな古生物好きの方のために、より大学生活を楽しむための方法をお伝えします!

 

DINO101

アルバータ大学では恐竜についての基礎を教えるオンライン講義を配信しています。教えるのは日本の恐竜特番でもおなじみで、アルバータ大学の古生物学の重鎮ともいうべきフィリップ・カリー博士です。恐竜の基礎を抑えておきたいという人や、単に恐竜が好きだという人は是非見てみてください。講義はCOURSERAで提供されているほか、携帯アプリからも同様の講義内容を無料で見ることができます。詳しくは大学のDINO101のウェブサイトをご覧ください。

IMG_1114
DINO 101では恐竜の基礎を学ぶことができる 

 

・博物館

アルバータ大学の地球惑星科学棟(Earth Science Building)の地下には古生物博物館があります。入館料は学校関係者以外でも無料ですので講義の空きコマなどで手軽に行くことができます。なお古生物博物館のすぐ近くには鉱物資料館もあり(こちらももちろん無料)おすすめです。

大学から電車で30分ほどのところには王立アルバータ博物館(Royal Alberta Museum)もあります。アルバータサウルスやマンモスの化石標本はもちろん、こちらも膨大な鉱物資料や剥製標本を展示しています。また科学系のことだけではなく文化の面でも先住民族や近代文明についての展示があり非常に面白いので行くことをお勧めします。

大学からかなり離れますが、州内にはロイヤル・ティレル博物館もあります。こちらは古生物が好きな人であればおそらく誰もが知る恐竜博物館です。膨大な数の恐竜の化石の展示はもちろん、カンブリア紀の復元展示やアルバータ州の復元展示など非常に面白いものばかりです。非常に貴重な化石資料を眼の前で見ることができるのも魅力の一つです。また博物館はドラムヘラーと呼ばれる「恐竜の街」の中にあり市内散策をするだけでも色々発見をすることができます。皆さんも機会があれば是非行ってみてください。

IMG_1259
王立アルバータ博物館では恐竜以外の化石を見ることもできる 

 

・フィールドコース

私が個人的におすすめするのが地学のフィールドコース(EAS110)です。ここでは実際に州内(一部BC州にも入ります)の様々な地学的に重要なポイントを訪れ、それまでの授業で習ったことを目で確かめながらフィールドワークの基礎を学びます。この記事の1.で書いたアルバータの特異な地形を全て見ることができますし、先述のロイヤル・ティレル博物館にも行くことができます。いくつかのポイントでは化石を見つけることもできます。約1週間の間に数十億年ものスパンの内容を勉強するので大変ではありますが、とても意義があるのでぜひ参加してみてください。

なおEAS110はオプション教科なので履修する必要はありませんが、学年が上がるとより専門的で古生物学に近い内容のフィールドコースが必修となります。そのため1年の間からカナダのフィールドになれる点からもEAS110はとてもおすすめです。
 
IMG_1475
フィールドコースではロイヤルティレル博物館にも行くことができる 

 

Dino LAB

Dino LABは恐竜好きであれば誰でも参加するべき活動です!ここではボランティア活動として大学に届いた恐竜の化石をクリーニングすることができます。実物の恐竜の化石を見て、触ることのできるまたとないチャンスです。経験がなくても全く大丈夫で、最初のうちは亀の甲羅のかけらや比較的壊れにくい哺乳類の化石のクリーニングから始まります。そこから徐々にレベルが上がり歯の化石のクリーニングを行い、より大きな化石を扱うことができます。なお筆者は現在獣脚類の腓骨(脚の骨)のクリーニングを行っています。ボランティアですのでお金は出ませんが、タダで恐竜の化石を触らせてもらえることだけでもとてもありがたいことです。

IMG_5095
クリーニング作業中の筆者
 

***

 いかがでしたでしょうか?今回の記事がこのブログ最後のものとなりますが、引き続き質問やメッセージは承りますので気になったことなどがあれば気軽に聞いてください! 

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 海外生活ブログ 海外留学(アメリカ・カナダ)へ
にほんブログ村
にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村